top-4Stheory-1

「このまま今の会社にいていいのだろうか」
「転職したいけど、家族にどう説明するか」
「定年後の人生、どう設計すればいいのか分からない」

転職、異動、昇進、定年、育休復帰など、キャリアには多くの「転機」が訪れます。その転機にうまく対処できるかどうかが、その後のキャリアを大きく左右します。

アメリカの心理学者ナンシー・K・シュロスバーグが提唱した「4S理論」は、キャリアの転機に直面した時に自分が持っているリソース(資源)を点検し、適切な対処法を見つけるための実践的なフレームワークです。

シュロスバーグは、「人生は転機(トランジション)の連続である」と捉えて、それを乗り越えるための対処法として「4S点検」を推奨しています。

4S点検-4つのリソースを体系化

  • Situation(状況)
  • Self(自己)
  • Support(支援)
  • Strategies(戦略)

こちらでは、キャリアの転機で迷ったときに有効な4S理論とその点検方法について、2回の記事に分けて解説します。

本記事1回目は、4S理論の概要と活用するメリット、そして4Sの各要素を詳しく解説し、実際に活用するチェックリストをご紹介します。

2回目は、4S点検の実践例をご紹介します。実際どのように活用するのかをイメージできます。そして、活用のコツ、ポイントをお伝えします。

キャリアの転機

転職や異動、昇進、定年、育休復職など、これらを人生の重要なイベントである「キャリアの転機(トランジション)」と捉えます。

転機の具体例

  • 就職、転職、異動
  • 昇進、降格
  • 育休取得、復職
  • 定年、再雇用
  • 起業、独立
  • リストラ、退職勧奨
  • 家族の介護、病気

転機には転職や定年など予期されるイベントと、リストラや病気など予期しないイベントがあります。転機は必ずしもネガティブな出来事ではなく、それを契機に自身が成長する機会でもあります。転機に適切に対処できるかどうかがとても大切です。

転機に直面したとき、出来事そのものではなく、それをどう受け止めて、どう対処するかが重要なポイントになります。

シュロスバーグの4S理論

4S理論はアメリカの心理学者ナンシー・K・シュロスバーグ(Nancy K. Schlossberg ,1929~)によって提唱されました。

Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(戦略)、これらの頭文字をとって「4S」と呼んでいます。シュロスバーグは自分がもっている4Sのリソース(資源)を点検することによって転機を乗り越える方法を提案しています。

4S理論では、それぞれ個人がもっているリソースを客観的に評価できることが大きな特徴です。

転機に直面して、何も動揺せず冷静に考えられる人は多くはないでしょう。ときには、感情に左右されて重視すべき条件などを見落としたり、情報不足や他者の意見に振り回されたりなどあるかもしれません。このような状況で判断をして転機を乗り越えることは難しいといえるでしょう。

これに対して、4S理論を使うと客観的に評価ができるため、主観だけに陥ることなく、冷静に選択肢を比較検討して、転機をうまく乗り越えることにつながります。

【4S理論を使うメリット】

  • 感情ではなく事実ベースで判断できる
  • 見落としていたリソースに気づける
  • 複数の選択肢を客観的に比較できる
  • 「なぜその選択をしたか」を説明できる
  • 納得のある決断ができる

4S理論は、私たちキャリアコンサルタントが実際の相談場面で広く活用しています。企業のキャリア開発やキャリア面談でも取り入れられているほか、家庭内では子の進学、進路決定などのケースにも応用できるでしょう。

4つのS(リソース)の点検

mid-4Stheory-1

4S点検は基本、以下の順番でおこないます。

まず、①Situation(状況)で転機そのものを客観視。
次に、②Self(自己)で自分のリソースを確認。
そして、③Support(支援)で周囲のサポートを点検。
最後に、④Strategies(戦略)で具体的な行動計画を立てます。

一つずつ丁寧に点検することで、全体像を把握できます。

ここでは、主観的ではなく客観的な視点でみるという意図があって、「点検」という言葉で表現されていると思います。

それでは、4Sの点検項目を詳しくみていきましょう。

1. Situation(状況)- 転機の状況を点検する

最初に、転機そのものの状況を客観的に把握することからはじめます。

キャリアの転機に直面したとき、ついつい感情的な対処になってしまうことがあるかもしれません。すると、感情と事実の区別をつけられず、冷静に状況を把握することができなくなります。 Situation(状況)の点検をすることによって、状況を客観的にみることができ、冷静に評価と判断ができるようになります。

【点検項目】 Situation(状況)

タイミング・いつ起こったのか(予期していたか、突然か)
・人生のどの時期に起こったか
・他の転機と重なっていないか
コントロール・自分でコントロールできるか
・他者や環境によって引き起こされた
・転機かどの程度選択の余地があったか
影響範囲・仕事だけの影響か、生活全体への影響か
・家族への影響はどの程度か
・経済的な影響の大きさ
持続期間・一時的なものか、永続的なものか
・どのくらいの期間で適応が必要か
評価・ポジティブな転機か、ネガティブな転機か
・自分にとってどのような意味を持つか
・ストレス度はどの程度か
過去の経験・似たような転機を経験したことがあるか
・その時どう対処したか
・その経験は今回に活かせるか

【チェックポイント】

□ 転機がいつ、どのように起こったか明確に説明できる
□ 自分でコントロールできる部分とできない部分を区別している
□ 転機が自分と周囲に与える影響を把握している
□ 過去の転機の経験から活用できることを整理している

2. Self(自己)- 自分自身のリソースを点検する

次に、転機に対処するための個人のリソース、自分自身がもっている強みや能力、特性を点検します。

転機を乗り越える力は、結局のところ自分自身の中にあります。しかし、自分の強みを過小評価したり、活用できるスキルに気づいていないケースがよくあります。

Self(自己)の点検で、自分が思っている以上のリソースを持っていることに気づくことが多いのです。

【点検項目】 Self(自己)

個人的特性・性格・楽観的か悲観的か
・柔軟性があるか
・変化を受け入れられるか
・問題解決能力はあるか
人生経験・これまで培った経験
・困難を乗り越えた経験
・失敗から学んだ経験
・多様な環境での適応経験
価値観・仕事で大切にしていること(やりがいなど)
・ライフスタイルの優先順位
・キャリアで実現したいこと
・妥協できること、できないこと
スキル・能力・専門的なスキル
・社会的なスキル(コミュニケーションなど)
・資格や免許
・学習能力、適応能力
心身の健康状態・身体的な健康状態
・精神的な健康状態
・エネルギーレベル
・ストレス管理能力
経済的状況・貯蓄
・収入の安定性
・生活費の水準
・経済的な余裕度

【チェックポイント】

□  自分の強みと弱みを客観的に把握している
□  大切にしている価値観を言語化できる
□  活用できるスキルや経験をリストアップしている
□  心身の健康状態と経済状況を確認している

3. Support(支援)- 周囲のサポートを点検する

そして、転機を乗り越えるために活用できる周囲からのサポート体制を点検します。適切なサポートを得ることが重要です。

サポートは家族や友人・同僚だけでなく、第三者専門家の意見・分析も取り入れましょう。Support(支援)の点検によって、冷静にキャリアの判断ができるよう十分なサポート体制を構築しているかをチェックできます。

【点検項目】 Support(支援)

家族・配偶者やパートナーの理解と協力
・親、兄弟姉妹からのサポート
・家族への影響と対処
・家族の経済的・精神的な支え
友人・知人・相談できる友人の存在
・同じような経験をした人とのつながり
・励ましてくれる人の存在
・客観的なアドバイスをくれる人
職場・上司の理解と支援
・同僚との関係性
・メンター、先輩の存在
・人事サポート体制
専門家・キャリアコンサルタント
・心理カウンセラー
・ファイナンシャルプランナー
・社会保険労務士
コミュニティ・ネットワーク・業界団体、同業者のネットワーク
・オンラインコミュニティ
・セミナー、勉強会でのつながり
・SNSでのつながり
制度・サービス・公的支援制度(雇用保険、職業訓練など)
・企業の福利厚生
・キャリア支援サービス

【チェックポイント】

□  相談できる人を具体的にリストアップできる
□  家族の理解と協力が得られているか確認している
□  活用できる制度やサービスを把握している
□  不足しているサポートを特定し、新たに構築できる

4. Strategies(戦略)- 対処する戦略を点検する

最後に、転機に対処するための具体的な戦略や行動計画を点検します。

Strategies(戦略)の点検では、具体的な行動計画、実行、そして問題解決などのサイクルを経て、最終的に転機を乗り越えていく段階です。

また、自分の転機に対する受け止め方を変える認知的な対処も重要です。

転機の状況が同じでも人が違えば、受け止め方はそれぞれ異なります。早い段階からポジティブな転機と捉えていると、すなわちリフレーミング(認知の再構築)した背景があると、その後の行動や問題解決も早く進むことが期待できます。

Strategies(戦略)の点検では、行動と認知の両輪で対処することが鍵です。

【点検項目】 Strategies(戦略)

情報収集・必要な情報を積極的に集める
・複数の情報源から収集する
・客観的な事実と主観的な意見を区別する
・情報を整理・分析する
行動的対処・具体的な行動計画を立てる
・小さなステップに分解する
・優先順位をつける
・スケジュールを設定し、実行に移す
認知的対処・状況の捉え方を変える(リフレーミング)
・ポジティブな側面を見つける
・自己否定的な考えを修正する
・現実的な期待を持つ
・長期的な視点で考える
ストレス対処・ストレスの原因を特定する
・運動や趣味でストレス発散
・十分な睡眠と休息を取る
・必要に応じて専門家に相談
問題解決・問題を明確に定義する
・複数の選択肢を考える
・各選択肢のメリット・デメリットを比較
・最適な選択肢を選ぶ
・実行して結果を評価する
適応・変化を受け入れる
・新しい環境に適応する
・柔軟に対応する
・必要に応じて修正する
・新しいスキルを学ぶ

【チェックポイント】

□  具体的な行動計画を立てている
□  複数の情報源から収集している
□  ストレス対処法を持っている
□  複数の選択肢を検討している
□  行動と認知の両面で対処している

btm-4Stheory-1

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

キャリアの転機は誰にでも訪れます。その転機をピンチではなくチャンスに変えるために、シュロスバーグの4S理論はとても有効なフレームワークです。

本記事1回目では、4S理論の概要と活用のメリットをお伝えしました。

Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(戦略)の4つの視点から、自分が持っているリソースを客観的に点検できるため、納得のある判断ができるようになるでしょう。

では、実際にどのように4S理論を活用するのか?

つづきの記事2回目では、ケーススタディで4S理論の活用の実践例を詳しくご紹介します。そして、活用のコツ、ポイントなども解説します。

下のリンクから、つづきをご覧いただけます。

4S理論を活用して、あなたのキャリアの転機を成長の機会に変えましょう。

出典

ナンシー・K・シュロスバーグ(武田圭太・立野了嗣監訳)(2000).「選職社会」転機を活かせ 自己分析手法と転機成功事例33 日本マンパワー出版

キャリアの転機でお悩みの方へ

「4S点検、やってみたいけど一人ではむずかしそう...」

そう感じた方は、まずはキャリアデザインXPの初回相談でお話を聞かせてください。

  • 国家資格キャリアコンサルタントがあなたのリソースを客観的に分析
  • 見落としているリソースを発見し、具体的な戦略を一緒に考えます
  • 1000名以上の面談実績に基づく的確なアドバイス
  • 守秘義務厳守で安心
  • 初回オンライン相談15分1,000円(税別)

「まだ何も決まっていない」「漠然とした不安がある」そんな段階でも大丈夫です。
まずはお気軽にご相談ください。

author-oguri

小栗  裕二 キャリアデザインXP 代表
国家資格キャリアコンサルタント、2級ファイナンシャルプランナー。
NHKエンジニア出身、1000人以上のキャリア面談経験。
キャリア相談では理論と実践経験を活かした伴走型支援とともに、
お客様の納得を最優先にサポートします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です